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企業経営を遂行するうえで財務上,意外と盲点になることが2つあります。
それは売掛金と商品在庫の管理です。
企業は新しく設備を購入する場合,長期の損益見通しを立て,メリット計算したうえ,投資すべきかどうかの判断をします。
また関連企業に出資したり,新たなプロジェクトに投資するに際しても検討に検討を重ね慎重に対処し,資金を支出したあとも絶えず注意を怠らないものです。
これに対し売掛金と商品在庫は,販売活動を行ううえで生じる必要なストックとして,通常は管理視野の外に置かれます。
しかし売掛金と商品在庫,この2つは注意を怠ると不良債権,不良在庫として増殖し,水面下で企業業績の足を引っ張るようになることを忘れてはなりません。
売掛金について書かれたものといえば貸し倒れに対処する法律がらみの書物がほとんどで,売掛金管理の実務を解説したものは数少ないのが現状です。
この本は,売掛債権の基礎から債権保全までの管理全般にわたり解説したものですが,なかでも売掛債権の実際の管理方法について多くのページをさいています。
また内容についても単なる一般的な知識の紹介にとどまらず,随所に現状の方法に対し新しい切り□による提案と主張を持たせたものになるよう意図して執筆いたしました。
読者の方々の業務に十分にお役に立てるものと考えております。
バブル経済が崩壊し低成長が続く中で,ビッグバンに向けて経済環境は激しい変化が続いています。
ここ数年大企業の倒産が続出し,中小企業も不景気と銀行の貸し渋りの影響でかつてない苦境に立だされています。
このような情勢のもとで,取引先の倒産と債権保全策の問題がクローズアップされる時代となりました。
売掛債権を貸し倒れの危機から守るためには,どうすればよいかというテーマは,企業の長い間の課題です。
この本を書くに当たり,この点についてある大手商社の審査部長にお会いする機会があり質問をしたところ7次のご返事をいただきましたのでご紹介しておきます。
「貸し倒れから身を守るためには,販売与信枠の設定,取引先の実情把握,経営分析による判断など,様々な方法や手段がありますが,最も大切なことは自社の売掛債権とその回収状況を,普段からよく見て十分把握し,少なくとも月ごとに管理することに尽きます」。
売掛金管理はなぜ重要か1 売上代金の回収は企業の大動脈 (1)売上高は資金の総源泉 あなたがもし営業マンであったとして,全く初対面の会社と取引しようとした場合,相手方が何をしている会社か,どの程度の規模なのか,儲かっているのかなど,まず,その会社についての予備知識を得ようと,あれこれ情報を集めて調べようとするでしょう。
もちろん,どの製品が売れそうだ,どのような商談ができそうだとの勘が働いて目星をつけたのですから,どんな会社かは,おおよその見当がついているはずですが,取引をするには,もう少しきちんとした情報を得ておく必要があるということです。
そのため,あなたは相手方の会社案内のパンフレットなどを見て概要をつかみます。
そして直近の財務諸表を見ます。
これは相手方から直接入手できるかどうかは別として,売り込み先であるからには必ず見ておかなくてはならないものです。
財務諸表の見方は奥が深いものです。
貸借対照表,損益計算書などから成る財務諸表には,その会社の1年間の努力の跡が刻み込まれています。
2年間分を比べればもっと動きがわかるし,数期間分か揃えばさらに情報が増幅します。
財務分析の経験を積んだ人なら,数字が並んでいるのを見ただけで深い情報を読み取れますし,より高度な分析をしたいと食指が動くものです。
財務諸表の見方については,本屋さんに行けば,これでもかとばかりにノウハウ本が並んでいるので,ご自分に合ったものをお読みいただくことにして,ここでは詳しい説明を省略します。
さてあなたは,貸借対照表,損益計算書を手にしたとき,どの数値を見るでしょうか。
経理知識の少ない営業マンなら,まず見るのは損益計算書の売上高でしょう。
そして経常利益から当期利益へと視線が下りてきます。
貸借対照表では,資本金を見て繰越損失がないか確認します。
まずは,その程度でしょう。
いや,決してばかにしているわけではありません。
これは経理マンでも誰であっても,最初ざっと眺めるときはおそらく同じでしょう。
普通,人は会社の大きさを見定める場合,資本金を横目で見ながら売上高で判断するものです。
したがって,経営者は業績を伸ばすために,売り上げの増加,拡大に向けて努力します。
会社の業績指標として,売上高と純利益のどちらがその実態をよく表しているかという議論が,しばしばなされますが,市場競争の中でのシェア拡大による営業効果が得られるメリットをはじめとして,売り上げの伸長は,在庫抑制などの資金量がいたずらに増えない手だてや配慮が行き届いてさえいれば,企業体がうまく回転していくため,皆,売り上げ増に注力します。
企業の資金繰りは基本的には家計と同じであって,サラリーマンなら,もらってきた給料を奥さんがやり繰りするように,企業の場合も,売上代金収入がいつ入るかを押さえ確認して,仕入代金や経費などの支払いをつき合わせながら,差引残高が赤字にならないようにやり繰りしていくのです。
資金繰りにおいても,売上収入が企業の資金の流れの総源泉であるといえるでしょう。
人間の体にたとえれば,顔や手足など外見を表すのが貸借対照表であり,ある期間内の活動過程を表すのが損益計算書ですが,これに対し,心臓と体の中に張り巡らされた血管,すなわち循環系統が資金繰りに相当します。
そして,資金としての「お金=売上代金」が全身を駆け巡るのです。
(2)売上代金の回収が遅れたら 黒字倒産という言葉があります。
ご承知のように,表向きは利益が出ていても,資金繰りがうまくいかず経営が行き詰まる状態を指したものです。
企業は事業を開始するに当たって,まず商品を仕入れ,販売のための在庫を準備します。
メーカーであれば,原料品,材料などを購入手当てして,製品をつくる過程が加わってきます。
そして販売という段取りになるのですが,最初に支払った商品や原材料の購入代金が,その商品や製品を売却することで資金として回収されるのは,ずっと先のことであり,その開投下した資金は,在庫とか製造過程の中で長期間回収されずに眠ります。
このサイクルは事業の開始のときだけでなく,その後も続くものであって,企業の資金繰りにおいては,支払いが販売代金の回収に先行するという基本構造が常に存在することになります。
このため,企業活動の過程では,本来的に資金不足が生ずるため,手元資金か借入金や手形の割引で,不足分を調達する必要が出てきます。
しかし,手元に余裕資金がなく借り入れもできない場合には,資金繰りがその時点で破綻するのです。
損益計算をしたら利益は出ていたのだからと,安心してはいけません。
経費の支払いもあるし,商品や製品が右から左にただちに売れるわけではないのです。
会社の資金繰りの様子は,公表される1期分の財務諸表からは,貸借対照表の流動比率または固定比率など,いわゆる静態的な見方として判断されるにとどまっています。
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